新国立競技の建設現場で新人の現場監督が過労自殺してしまった事件について、現場が大きいだけあって注目されています。しかし、実際に建設業において若手の現場監督が自殺するケースはよく耳にします。
あまり表沙汰にはなっていないのが不思議なのですが、毎年そういった残念な出来事が起きているのも事実です。
わたしは、以前まで建築の現場監督として働いていました。
その業界にいると他社で「新人の監督が自殺してしまった」と話題になることもしばしばありましたが、幸運なことにわたしが所属していた会社では、そういった出来事はありませんでした。こういった噂話しも様々な現場に出入りしている職人たちによって拡散されます。
現場監督の仕事について、どの程度の苦悩があるのか明確に知っているのは経験している者だけだと思います。
今回、若手現場監督の1日の仕事を説明します。
現場監督をやっている方はこちらの記事へどうぞ。
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現場監督の仕事概要
現場監督といっても、いくつかの種類があります。大きく分けると建築・設備・電気の3種類の監督がいて、一般的にイメージするのは建築の現場監督かと思います。
建築の現場監督だけにフォーカスしますが仕事内容は、ゼネコンとハウスメーカーとで異なります。
それぞれの仕事内容は下のようにまとめます。
ハウスメーカー
個人住宅がメイン(木造が一般的)、稀に集合住宅(木造アパート)も担当
現場には常駐せず、担当者1人で5件~10件程度見回る
材料等は会社のシステムなどで簡単に発注できたりする
担当物件が遠いと移動で1日が終わり=残業につながる
施工写真は職人まかせ
ゼネコン
大型物件のみ(公共施設~タワーマンション)など様々
現場稼働時は常駐が義務付けられている
建材は緻密な打ち合わせによって決定し、監督の裁量で決定できる場合も
施工図や作業指示書と呼ばれるものをとにかく書く
施工中の写真をとにかく撮影しまくる
ハウスメーカーの場合、一人で担当する物件が多いため品質管理については、実際に工事をしている職人さんたちの手に委ねられていると思っていいでしょう。
ハウスメーカーよりも和風建築に拘りがある、昔ながら大工がいる工務店などのほうが品質管理の面では素晴らしいと思っています。
ゼネコンだと会社の規模によりますが、工種別に現場監督を配置したりします。
例えば、基礎工事専任の現場監督や内装工事専任の現場監督といった具合に細かく仕事を分けています。
しかし、すべてのゼネコンがこのように工種ごとに分けることができるわけではありません。予算が少ない現場やもともと技術者が少数精鋭の会社であれば、工種別でわけられないため多くても2~3人で担当する場合がほとんどです。
わたしが経験していたのは、ゼネコンと呼ばれる部類ですのでこちらの1日の流れを説明していきます。
ゼネコン若手現場監督の1日の仕事
就業開始時刻
現場の就業開始時間は基本的には朝8時になります。
建設現場の周辺に住宅が多くあったり、クレーム等がある場合には稼働開始時刻をずらしたりする場合もあります。
たとえ稼働開始時刻をシフトしたとしても、現場監督は、8時前には現場に到着することが基本となっていて、若手の場合だと7時頃には到着して現場事務所の掃除などを一通り済ますことが多いです。
実際の就業開始時刻は、遅くても7時半
建設現場での朝礼
毎朝、必ず現場では全体朝礼を行います。
当日に行う工事に集まっている職人たちの前で1日の工程の流れや危険事項・注意事項などを発表したりします。
また、現場の規模にもよりますが現場に出入りする人数が多くなればなるほど朝礼時にいる人数も多くなります。(一番多かったのは300人くらい)その為、拡声器を使った朝礼をする場合があり、この時の気分は、小学校の校長先生みたいな感じになります。
全体での朝礼後、職種別にミーティングを行います。
専任の現場監督がいる場合は、それぞれ工種ごとに分かれてミーティングに参加します。
専任が配属されていない場合は、職長のみを集めて全体ミーティングを行います。職長は、基本的に仕事熱心ですが、若手の職人とかだと全く話を聞いていなかったりもします。そういう時は、注意したりもするのですが、見た目が怖かったりするので豆腐メンタルだとかなりキツいです。
このような感じで朝1番の仕事は終わりになります。
朝礼後、午前の作業
朝礼後は、現場内を廻ります。この時、現場で一番上の立場にいる所長と回ることが一般的だったりします。
所長は一周後、事務所に戻ってしまいますが、新人監督の場合は、現場の掃除をやらされます。
わたしも最初のころは、掃除ばかりやらされた気が狂いそうになりました。しかし、掃除をすることで細かいことに気がつく力が身につくため、結果として良かったかな?とは思っています。
掃除を基本的にやりながら、職人の手伝いをすることもあり、職人からの要望を聞き役として徹することが若手現場監督の仕事の1つとしていえます。
例えば「工具を持ってきてくれ」・「この場所、掃除してくれ」・「材料を3階まで持っててくれ」など1人じゃ対応できないほど大量におつかい注文をしてきたりします。中には理不尽なことを言ってくる職人もいますが、基本は優しい人が多かった印象があります。
入社して半年程度はこんな仕事をすることが一般的だと思います。
昼食後、午後の作業
新人監督だと午前の作業と同様に午後もひたすら掃除を中心とした作業をします。
また、仕事の1つとして「工事中の状況写真を細かく撮影する」というのがあります。
細かさをジュースで例えると、撮影ポイントは次のようになります。
撮影ポイント 例:ジュースを飲み干すまで
・自販機でジュースを購入
・自販機からジュースを取り出す
・ジュース全体(重量測定も含め)
・ジュースの蓋(詳細)
・ジュースの蓋を開ける仕草
・開封後の全体(重量測定も含め)
・開封後の蓋(詳細)
・飲む仕草
・飲んだ後の空き缶全体
・詳細・・
日常的な写真撮影に比べると、いかに細かく撮影する必要があるのか理解いただけたかと思います。
これを工種ごとに撮影する必要があり、監督が多くいるときは、そこまで大変ではないです。
しかし、少数の現場ではとにかく走り回る必要性がでてくるため、ここでもかなりの体力を使ってしまいます。
現場稼働終了後
現場の終了時間は、基本的に5時ぴったりです。この時間になると職人たちは、まっすぐ帰宅してしまいます。
なお、現場監督はここからさらなる仕事が待ち構えていることがほとんどです。
新人監督の場合は、写真の整理や先輩に頼まれた書類の作成をこの時間から作り始めます。一般的に残業と言われている仕事です。この流れは、諸悪の根源としか思えません。
日が明るいうちは、現場で体力勝負をして、日が落ちたら今度は事務作業をする流れはしんどいと思いました。
業務量にもよりますが、ここから作業すると平気で10時とか11時にはなってしまいます。この後、疲れを感じながら自宅に帰ります。
建設現場の場所によっては、自宅に帰ることすら不可能なときがありますので、そういった時は現場に泊まることもしばしばありました。
と、こんな感じで現場監督の1日は終わります。
おわりに
建築の現場監督だけでなく設備・電気の監督でも大変さは変わりません。
現場監督の仕事だけがブラックとは思いませんが、気がついたら時間労働がすごいことになっていると思います。
1日を通しての仕事をあっさりと書いてしまいましたが、この労働時間に加えて休日出勤もざらにあるので、どうやったら建設業界がまともになるのかまったくわかりません。苦労した分だけやりがいがあると言われていますが、劣悪な環境で仕事を続けることにどんな意味があるのか分からなかったのが本音です。
人によって考え方は違うと思いますが、建物が完成したときの達成感に満足する人もいるはずです。少なくともわたしは、こんな生活を5年近く送っていたことをすごく後悔しています。
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以上!