冒頭からダークネス全開の展開を見せてくれる『ワンダーランド』
ここでは、ワンダーランド一巻のネタバレを含む感想で作品を紹介しています。
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ワンダーランド1巻に登場する重要人物
メイン人物:本田由紀子(通称:ゆっこ)
とある朝、ごく普通の女子高生である「ゆっこ」は目が覚めたら体が小さくなってしまった。
小さくなってしまったことで彼女の世界は一変してしまい両親に助けを求めるが、両親もまた「ゆっこ」と同じく小さい姿へと変貌してしまっていたのです。その後ほどなくして、飼い猫のミーくんの手によって両親を亡くしてしまうが、立ち直る姿や勇気ある姿は『ワンダーランド』の見どころの1つでもあります。
重要キャラ:愛犬ポコ
ゆっこが幼いころから飼っている愛犬のポコ。犬種はシープドッグという長い毛を持っている洋犬です。
ゆっこの体が小さくなっているのにも関わらず、動物たちには影響がなかった。犬よりも小さくなってしまったゆっこは、愛犬ポコと助けを求めるために外の世界へと旅立つ。
重要キャラ:アリス(Alice)
ゆっこが助けを求めて立ち寄ったコンビニで出会った謎の外国人美女のアリス。
物語のカギを握っている人物で『ワンダーランド1巻』では、体が小さくなってしまった原因を知っている素振りをみせています。アリスはゆっこのことを友達と思い、小さい姿から難を逃れるためにゆっこと行動を共にすることになります。
『ワンダーランド1巻』のネタバレあり感想
1巻冒頭:パニック状態からのスタートで釘付けになる
【物語内容】
とある朝、学校に遅刻しそうになりそうところを同級生の連絡で目を覚ますと、まるで夢のような世界にいる状態で起きてしまう。自分の姿がティッシュ箱よりも小さくなっているため、寝ぼけているだけだと思った「ゆっこ」は二度寝をしようとしてしまう。
そこに、愛犬のポコが朝のご挨拶にゆっこのことを舐め、夢では味わえないようなリアルな感触に戸惑う。ことの重大さに薄々ながら感じながらも、両親に助けを求めにいくと、飼い猫である「ミーくん」に両親たちは弄ばれていた。
終いには飼い猫に両親を殺害されてしまい、身の危険を感じた「ゆっこ」は夢の世界ではなく実際に起きていることだと深く実感し、愛犬ポコとともに助けを求めて外の世界へと向かう決意をする。
【以下、冒頭の感想】
最初からダークネスな展開が全開で釘付けになりながら読みました。体が小さくなってしまう不思議な状況であれば、誰もが夢の世界だと勘違いすることに違いありません。しかし、飼い猫に両親を殺されてしまう流れはあまりにも「あっさり」しすぎているような気持ちになってしまったのです。
その後のゆっこは涙を見せながらも、助けを求めて外の世界へと旅立とうとする場面では淡白な印象を受けました。個人的にもう少し掘り下げても良かったのではないかと思います。あまりにもあっさりとしたゆっこの性格には、ちょっと疑問が残る部分もありました。しかし、逆にテンポが良く展開が進むため、ダラダラとするよりかはいいのかもしれません。
1巻中盤:アリスとの出会いと脅威からの逃走
【物語内容】
外の世界に旅立ち、世界の豹変ぶりに驚くゆっこ。周りには通常の大きさの人間が一人もおらず、カラスや野良猫に襲われている人々の姿を目の当たりにする。
危険な場所から逃れるためにポコに乗って移動する。しかし、途中でポコが空腹状態になってしまい仕方なしにコンビニへと立寄るゆっこだが、小人になってしまった他の人が店を占領していた。犬に食われると勘違いした人々はゆっことポコを追い出そうとする。その時、物語の重要人物であるアリスが登場し、ゆっことポコはなんとかコンビニへと入ることができた。
そこにいた人々に「小さくなってしまった事件」について世の中の動きについて聞くことができた。
ゆっこは世界の異変の中、救助を待たずに知っている人物に会うためにコンビニから再出発する。ここからアリスと一緒に行動することになり、ゆっこ一人では危険だからとコンビニにいた一人の男性も一緒に旅立つことになる。
再出発後、道中で自衛隊と遭遇し、一緒にいた男性は助けを求めて近寄ったところ、助けようとはせずに捕獲されてしまう。
その後、彼の身を案じたゆっこたちは様子を見に、自衛隊の仮拠点での様子を見て、自衛隊は助けてくれる存在ではないことを理解する。
そして、一時的に身を隠すためにショッピングモールへと向かう。
【以下、中盤の感想】
電話もインターネットもテレビも遮断された世界の恐怖感が上手く表現されていて、情報が自分に入らないときのパニック感はこのようになるのであろうと感じました。普段、何気なく利用しているスマホやテレビが使えない状態は現代社会でも恐怖の1つになりえるかと思います。
そして、外の世界に旅立ったゆっこがカラスに襲われている人々を見て、恐怖しながらも「自分だけは助かりたい!」という強い気持ちを描いている点はリアリティがありました。現実社会でも同じような現象が起きれば、みな同じことを思うはず。
コンビニに立ち寄った際も同じように、安置としてコンビニに居座っている人々はある意味正しい判断。
中盤では、ダークらしい展開とリアルな側面を織り交ぜた内容で、情報社会での外部遮断の恐怖が読んでいるこちらまで戦慄するほどパニックになってしまうほどでした。物語の重要キャラであるアリスとの出会いはコンビニで、ここから一緒に行動を共にするのはなぜなのかちょっとわからなかったのですけど、これはきっとアリスのお人好しさがそうさせているのかもしれません。
1巻終盤:アリスの不思議な力が現れる
【物語内容】
ショッピングモールへと一時避難したアリスとゆっこたちは、売り物で身支度をすることに。
ところが、ショッピングモールに避難していたのはゆっこたちだけではなかった。
ギャングのような団体がショッピングモールを占領しており、避難して隠れていた人たちを追い出そうとしてくる。小さい姿をいいことにやりたい放題の姿は「北斗の拳」に登場する雑魚キャラのような振る舞いで暴れていた。
避難していた人々を見つけては、虐殺する姿にアリスは不思議な力で止めようとする。
その後、アリスはなぜか気絶してしまい、残されたゆっこや避難していた人々はショッピングモールから追い出されることとなる。外の世界は危険であるから見逃してほしいと懇願するが、聞き入れてもらえず、外へと追い出されてしまう。
しかし、ショッピングモールの外には大量のネコたちが待ち構えていた。逃げるところで『ワンダーランド1巻』は閉幕します。
【以下、終盤の感想】
ショッピングモールで登場するギャングのような集団はまるで「北斗の拳」にでてくる「ヒャッハー!たち」のような感じでちょっと笑ってしまいました。彼ら狂っている理由はシンナーによる中毒状態であるため。 自衛隊につづいて、小人化してしまった人の中にも敵がいることで更にパニック感を煽っているようにも感じました。
そして、なにより気になるのがアリスの不思議な一面が描かれているシーン。不思議な力を使ったあとにアリスは気絶してしまい、力には副作用のようなものが存在することが見受けられます。そんな中、ギャングたちからはショッピングモールを追い出されてしまう展開になり、外からはネコたちの襲撃が待ち構えているところで『ワンダーランド1巻』は終わってしまいました。
最後のネコたちの襲撃は2巻を早く読みたくなる内容で、この時の心境は海外ドラマのラストシーンを見ているかのような気持ちにさせられました。海外ドラマのラストシーンはいつも次が気になる終わり方であまり好きではないのですが、連続して見ることができるときはわりと好きというジレンマw
さいごに
『ワンダーランド1巻』を総合的にみると、最初から最後まで戦慄するほどのパニックが連続していて、ダークネスファンタジーが好きな人なら楽しめる作品の1つと言えます。全6巻で完結しているため、読みやすいボリューム感でもあります。
『ワンダーランド』著者:石川優吾©Yugo Ishikawa/発行所:株式会社小学館